写真、自然、音楽、科学、が趣味

生活の風景

音楽、写真、日常を切り取る感じで。

8.hey,ma

 

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boniverのジャスティンが地元ウィスコンシンで主催してるフェスで、地元の合唱団と共演してる動画がある。heavenly fatherという曲で、boniverの中で最も好きな曲だ。

 

 

https://youtu.be/fG8jY0EhfUE

 

 

ゴスペル。

 

ルーツミュージックであり、キリスト教の神を称える歌であると同時に、労働者のための歌でもある。

土の匂い、労働環境の過酷さ、喜びと悲しみ、そして、死。

電気もなく、ランプで照らされる景色までが世界の全てであった時代から、脈々と受け継がれきたの祈りの歌。

そういう名もなき歌の数々こそがどれほど大切であるか、今や世界のトップバンドになったにも関わらずバンドリーダーのジャスティンはよくわかっている。

故に飾らない服装で、日焼けした顔で、合唱団がコーラスする姿は変わりゆく日常の中でも、変わらない人間の姿をありありと映してしていて、とても良い。

 

 

 

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動画を見た後に、少し心が浮き上がったまま、着替えて外に出る。仕事をして、ふと山に置いてきた道具を思い出し、それを取りに行きがてら、写真も撮ろうと思った。

boniverのアルバムをヘッドフォンで聴きながら、雪が深く残る道なりを、ぬかりながら歩いた。

去年出したアルバム、i , i。日本語で書くとアイコンマアイとなるが、どうしてこんなタイトルをつけたか気になった。

 

歩きながら考えていると犬がついてきた。坂道に差し掛かる時に、hey,maという曲が流れた。

この曲は、かつて炭鉱の時代に過酷な労働の中で唯一の楽しみは母親と連絡を取る事だけだ、という曲だ。

hey,maとはhey,motherの事。それを聞いていると、ふとアルバムのタイトルがi , i なのかがわかった気がした。

 

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iという文字は、よく見ると目から涙が出てるように見える。i , i 泣いているという事か。そう言えば次の日曲はuであり次の曲はnaeemという曲でサビの部分ではジャスティンがこう歌いあげる。

聞こえる、聞こえる、君が泣いているのが聞こえる、と。これがちょっと気にかかっていた。

つまりi , i は二面性であり、この7曲目のnaeemという曲を中心に二つのストーリーが存在するという事なのかなと思った。一つは一曲めから7曲目まで。二つ目は7曲目から13曲目まで。おそらくフランクオーシャンのブロンドというアルバムにインスパイアされたのかもしれない。

 

君が泣いてるという歌詞は、分断された壁の向こう側のメキシコ人達の事を指すのだろう。

そう思いながら歩いていると見事に雪にズボッとハマって腰までぬかった。

思わず苦笑いをして空を見上げた。

 

hey,ma,hey,ma。

 

 

 

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その後もう一度hey,maを聞いて音楽を止めて歩くことに集中した。そして道具のバールを取り、そのまま山の上まで登る事を決心する。

 

息を切らしながら登り、頂上に着いた時は思わずへたりこんだ。息が整うのを待ち、ゆっくりと風景を見た。

真っ白な雪原。白い犬が俺の隣に座り、尻尾をふりながらそばにいてくれた。

 

再びheavenly fatherを聞いた。こちらに向かって吹く風が歌ってるようだ。脈々と生きてきたコーラスが、雪原に残った足跡と重なる。

その足跡もすぐに消えてなくなっていく。

 

 

 

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頭の中を切り替えた。少し休んだらまた仕事をしなければいけない。犬を撫でて、hey,maを聴きながら歩き始めた。

 

 

https://youtu.be/HDAKS18Gv1U

 

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