一月上旬にキハ、普通列車に乗って森町から新函館北斗駅まで行ってきた。
新函館北斗駅は北海道の玄関口で新幹線がここまで来ている段階だ。
今回は森から新函館北斗駅まで、特に大沼という場所は湖と湖に挟まれる形で鉄道が走っている区間があったり、そこでは白鳥がいたり、とても絵になる場所が結構ある。
ただ残念ながらいいポイントは行くのが困難だったり、撮りたいが車道に面していて邪魔になるし、警察に怒られるだろうという場所ばかりでなかなかポイントがしぼれないというのが実感だ。
今回は列車に乗りながらポイントを探しつつ、景色を撮ろうと思った。
改札口を通ったら思いがけず、嬉しい誤算が階段に映っていた。
柔らかく、暖かい、そしてなにかの暗示のような光のシルエット。
今年は意識して光と影を撮ろうと思っていたけどこういう形で転がっているとは。
いい天気で暖かく、耳を澄ませると海の波の音も聞こえる田舎の理想的な駅の環境と言えばいいか。
駅員が歩いてる人っ気1人いない構内。いただいた。
ここには二度三度きているけど来る度に鉄道ファンがいる。やはり人気のスポットなのだろう。
モノクロは存在そのもの。静かにシャッターを切る。
富士フイルムxpro2 、レンズはxf16ミリ。
ズームレンズは車に置いてきた。
なんとなく自分の実力で撮ってる気がしない。子供の学芸会とかなら迷わずチョイスするが、そうでない時はあまりチョイスしたくない。
しかしキハに乗り込んで、失敗だとわかった。
新函館北斗駅までの約一時間、自動ドアの所で立って撮影しながら左右の窓から写真が撮れそうなポイントを探そうと思った。
しかし自動ドア付近は暗すぎて、窓から見える景色は逆にそのせいで眩しくて景色が見えない状態だった。
かー、どうすっかなと車内に入り、窓を見たがあまりピンとこない。
一旦車内に入って光と影を写すけど、ここじゃないと思い、また自動ドアの所へ。
うん、まー仕方ない。なんとか勝負できるか。
景色が流れていく。
ズームレンズが欲しいぜ。でも楽しいぜ。
モノクロで撮るとこんなに違うものか。光が通路に反射して存在感をあらわにしていた。色が消えるとメタリックな質感が強調されていてなんだか違う乗り物みたいだ。
三年前の台風でなぎ倒されていた木が、未だに処分されてない所がいたるところにあった。地方財政の限界を見た気分だ。
そして駒ケ岳を全面に撮るために16ミリの単焦点一本にしたが、雑木林で駒ケ岳は見えず、ようやくひらけた場所でシャッターチャンスと思ったら防雪作でこの有り様だ。
完全に失敗だった。
しかし気分は悪くない。良い写真が撮れそうな予感はあったし、少し失敗する事が嬉しかった。
10分間の停車中に車内に入った。光が乱反射していて、それぞれの現実の窓からの入り口を想像した。
プリズム。光の屈折作用。ピンクフロイドの有名なジャケットを思い出して、不意に頭の中でechoesが流れはじめた。なんというめちゃくちゃな想像力か。自分のアホさ加減に少し笑い、そんな風に考える事自体がまだ余裕がある事なのかもしれないと思った。
その光はどのくらいでここまで来たのか。
光のシルエットを見ながら、あのシーンがechoesのメロディーと共に浮かびあがった。