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生活の風景

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66.フランクオーシャン blonde

 

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https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kClWWfWghQXro7ONQ-DfH3RZ1oxiu0kMA

 

 

今日は大好きなアーティスト、フランクオーシャンについて書いてみたいと思う。

日本での知名度はどうなんだろうか?やっぱり知らない人の方が多いと思うけど、特に服や音楽、映画が好きで十代、二十代の若い人達はぜひ知っておいてもらいたいアーティストだ。

 

個人的におそらく一般的な人よりも音楽は聞いてるし、詳しい方だとは思う。ただ沢山聞いてるからといって音楽がわかっているかどうかは別問題だ。

 

高いカメラを持っていても写真を撮るのがうまいかどうかは別問題だと同じように、量ではなく質の問題だ。スマホで上手い写真を撮ってる人はいくらでもいる。その事を認識することはとても大切な事だと思う。

 

それを踏まえた上でも、このフランクオーシャンは本当に天才だと思うし、blondeを二度、三度聴いてるうちに完全に参った、降参だ、完全に打ちのめされたと思った。

 

 

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おそらくヘビーメタル系の雑誌以外で、このフランクオーシャンのblondeを高く評価していない音楽雑誌はないだろう。

 

どの雑誌も2010〜2019年までのアルバムランキングというの発表してると思うけど、このフランクオーシャンのblondeがあるいは前作のchannel orangeをベスト10に入れてない雑誌はないと断言していい。そういうランキング自体、雑誌の個性を売り込む企画でしかないけど、それでもベスト10に入ってないのであれば、その理由を聞きたいくらいだ。

 

 

このblondeはとてもゆるやかなメロディーでリズムはゆったりして聞きやすいアルバムだと思う。BGMとしても良いし、どのシチュエーションでも合うアルバムだ。冬の景色の中でも、夏の暑い景色の中でも、あるいは街の雑多な所でも、自然の所でもどこでも聞ける不思議なアルバムだ。

 

それは普遍性をはらんでるからに他ならないけど、聞き込めば聞き込むだけ深みが増すし、それぞれの思い出に寄り添ってくれるアルバムだと断言する。

 

 

そしてこのアルバムを語る際に日本のとあるアニメ映画の世界観も欠かせない。

 

 

アルバムは聞きやすいと書いたが、実は唸るぐらい工夫が凝らされていて、もうプログレと言ってもいいくらいのアルバムだと思う。プログレシッヴと言えばアルバム一枚で一曲のアルバムというのが多かったり、ストーリーがあったりするけど、このblondeもそうだ。ちなみにレコードジャケットにはblondと書いてあるが、正式なアルバムタイトルはblondeだ。

 

1曲目から17曲目まで聞くとループして1曲目に戻るという風になっている。ここまでは別に珍しいわけではない。

 

だが、フランクオーシャンの場合1曲目から9曲目の曲のテンポが変わる瞬間までと、その曲のテンポが変わってから17曲目までと別々のストーリー展開になっており、それぞれがループしているという事になっている。

つまりアルバム自体ループ🔁しているのだけど、さらにそのループしてる中でもループ♾しているという構造になっている。

それも1曲目からちょうど30分経過したところで変換され、残りの30分と対に(ツイ)になっている。

 

 

 

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彼といえばいいのか、彼女といえばいいのかわからないけど、フランクオーシャンはLGBTだ。今はLGBTQというのかな?その辺の知識が浅く、申し訳ない。ただできるならば差別する意図がない事はわかっていただきたいと思う。

フランクオーシャンにおいて二面性というのはとても大事な事だ。男性としての自分、女性としての自分、そしてアルバム自体も2つの側面があり、曲によっても二つの側面があったりする。

 

blondeというタイトルからして女性表記になので、やはり二面性があるという事がわかる。

 

 

 

 

 

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アルバムのストーリーとしては幼少期にあった事などを振り返る→→→→母親に欲望にまみれずにあなたはあなた自身でいてね、という注意、説教の留守電を挟みつつ→→→→名声、金を得るによって欲望に溺れつつ別れがあったりする→→→→ちょうど中間の9曲目を境にそんな現実から逃れるが相変わらず孤立している→→→→自分自身の人生を振り返りつつやがて自己再生をしていく→→→→昔の友達に仲間に昔のようにまた仲良くなって楽しまないかという流れかある→→→→そしてラストは未来ある子供の話を聞き1光年ってどのくらいなの?という質問を最後に終わり、また1曲目に戻るような構造になっている。

 

一言で言うならこれは自己再生の物語だ。昔を懐かしみつつ、名声も金も手に入れるが幸せではない前半のストーリー、そしてそのどん底の状態から人の価値観に囚われる事なく自分自身ありのままの姿です生きていくという後半のストーリー。この二つのストーリーが互いにループし合いながら、物語は繰り返されるという事になっている。

それもストーリーだけでなく時間軸でも秒にまでこだわっている所がもう頭がおかしいんじゃないかってくらい凄いw。

 

曲のタイトルからもこだわりがうかがえる。

 

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冒頭のnikesは欲望にたかる連中はナイキの商品をチェックする、という出だしから始まる。ナイキのロゴマークはチェックマークだ。そしてナイキのもう一つの意味はギリシャ神話ではニキと言って勝利の女神を指す。つまり二つの意味合いがある。

 

そしてbe yourselfはあなた自身である、という事であり、これも二面性で聞き手には私自身でいる事となる。続いてのsoloは1人でという意味だし、self cotrolというタイトルやgood guyなどもやはり他者と自分、あるいは自分から見た他者、という二面性がうかがえるし、ivy、pink+whiteやskyline toなども神との対峙といえばいいか、歌詞の中には栄光や赦しなどが歌われていたりする。

 

 

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そしてnightsからは他者から見たsoloを挟んであちら側とこちら側という歌詞が印象的なpreety sweet、そしてFacebook story、デジタルの中での自分と本当の自分、close to youではあなたという自分に近づいていき、white ferrari、真っ白なフェラーリのように純粋で美しくてそして速く、seigfreed、ジークフリードのように勇ましく、Godspeed、神の速さ、つまり光のように速く進み、futura free、未来に向けて自由になっていく、という見えそうで見えない意味が隠れていたりする。

 

正直ここまでこだわるアルバムというのはあまりないし、こんなに聞きやすい上で、計算され尽くされているという事に、ただただ脱帽する。

 

 

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個人的にハッとしたのはジークフリードという曲。恋人と別れ、彼は傷心のまま人生を振り返る。

 

常に他の人の人生の中で生きてきた。多くの人々の理想というのは、2人くらい子供がいてプール付きの家に住み、幸せに家族と生きることだ。だがLGBTである自分はそのような理想は受け入れられない。世間は、世界はその事をわかってくれない。誰かの、あるいは多数派の理想、概念の世界で生きてきた。これは俺の人生ではない。

 

 

ドラッグをやって、ハッパを吸って夢の中でようやく理想の自分を生きていける。夢の中でしか自分は自分でいられない。

 

この曲を聞いた時に、そういうLGBTの人々の苦悩に気づかされたし、この曲の美しさに圧倒されつつ、ある作家を思い出した。その作家の名前は宮沢賢治だ。

その事は次の記事に書きたい。

 

 

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次にこの写真に注目したい。この真っ赤なヘルメットに赤い服、わかる人にはわかると思う。

これは日本のジャパニメーションの先駆けであるAKIRAをイメージしてるのだろう。

 

これはiTunesのフランクオーシャンの写真で誰でも見れるけど、このblondeを発売した時に変わった写真だ。

フランクオーシャンの人生にも大きな影響を与えたのだろう、AKIRAはこのblondeという自己再生物語にも色濃く影響を残しているような気がしてならない。

 

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ネオ東京で排他的な青春を送りながら、ある事故をきっかけに鉄雄は超能力を身につける。身に余りすぎる力を抑える事が出来ず、膨張していく鉄雄を救い出そうとする幼い頃から一緒だった金田は、鉄雄の暴発するパワーの中で過去の思い出を見る。

 

フランクオーシャンのアルバムも過去の思い出と交錯しながら展開していくところとか節々にAKIRAの映画を感じさせる部分があるのだ。まぁこの言い方は抽象的すぎるかw。

 

 

 

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ただpretty sweetという曲のあちら側とこちら側という視点とか、歌詞自体がAKIRAを彷彿させたりする。

 

そして去年知ったのだけど、フランクオーシャンのファンが作ったムービーが話題になっており、これを見た時に思わず膝を打つくらい大きなヒントになった。本当にこれは凄くこのblondeをより理解する上で、味わう上で役に立った。ぜひ見てもらいたい。

 

https://youtu.be/F5WWyyYG018

 

ジークフリードの曲に合わせてAKIRAの映画が流れる。都会の雑踏の中で逃げ惑う者、そして追いかける者、フランクオーシャンがいっその事何もかも捨ててみんなと同じ生き方をすればいいのだろう、でもそんな事はできない、俺は外側で生きていきたいという風に歌うのと見事にマッチしている。

 

そして次は天空の城ラピュタ。ピンクのタコに乗って男の子と女の子がラピュタに着く。

男、女性の両面を持つフランクオーシャンと掛けている。そしてpink +whiteはハリケーンカトリーナで被災した思い出を歌っているけど、天空の城ラピュタも嵐の中をくぐり抜けていく。とまぁこんな感じだ。いや、本当にこの動画はよくできていて本当に参考になった。

 

 

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このアルバムを多くの人に聞いてもらいたいし、特に十代、二十代の人達は、このアルバムをより感受性の高い時期に聞けるというのは幸せな事だと思う。

 

ブルースやジャズがあり、影響を受けたビートルズローリングストーンズやキングクリムゾンがいて、やがてソウルミュージックも注目されつつポップミュージックが生まれた。ビートルズがやはり大きな存在だと思う。だがポップミュージックとしての大きな完成形を作った人物を言うならばビートルズではなく、プリンスではないかと思う。

 

 

 

そして同じようにR&Bやポップミュージック、ヒップホップをベースにエイフェックスツインなどのエレクロトニカ、エリオットスミスやレディオヘッドのトムヨークなど繊細なジンガーソングライターの影響を受けつつ昇華して見事なアルバムを作りあげたのがフランクオーシャンだ。

 

 

 

 

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本当に30年に1人の存在といえば良いか、さらにblondeの楽曲はビートルズがよくレコーディングに使ったアビーロードスタジオで録っている。

個人的には完全に出来過ぎなくらい出来上がったストーリーだw。

 

 

nightsは実際にはビートルズのa days in the lifeのアンサーソングとされている。歌詞を照らして見るとわかるが、まぁハッパ関係の話しだw。

 

 

自分は44歳だ。率直に言うともう自分より若い人達の音楽を聴いても、感動する事はあっても人生のサウンドトラックになり得る音楽はもうないと思っていた。

 

プリンスのsign o ' the time、マイルスデイヴィスのビッチズブリュー、nirvanaのインユーテロ、toolのlateralus、weather reportのsweet nighterそしてブランキージェットシティーのlove flash fever、このアルバム達と肩を並べるアルバムは出てこないと思っていた。

10代から30代まで多感の時期に繰り返して聞いた音楽で、若年の時に聞く音楽はやはり特別だと思う。

そんな自分にフランクオーシャンは、とてつもない驚きを与えてくれて、未だに週に一回はアルバムを聴いている。

 

futura freeという最後の曲で子供と対話してるのだけどそれはフランクオーシャンの弟のライアンだ。実は先日、ライアンが車の交通事故で亡くなったというニュースを読んだ。フランクオーシャンには辛すぎる現実だ。このfutura freeという9分24秒の曲のライアンが最後に喋る言葉こそ、実はblondeというアルバムにおいて重要な役割がある。

 

ライアンが安らかな眠りにつく事を願ってやまないし、フランクオーシャンの痛みもいつか和らぐ事を、願ってやまない。

 

 

最後にこの9分24秒のfutura freeという曲のラストの言葉で終わりたい。

 

 

 

 

1光年ってどれくらい遠いの?どのくらいの長さなの?

 

 

 

          🔁♾🔁