月の光の下、雪原を歩く。マイナス10度を下回る世界を。
影が雪原にヒビを入れてるように見えた。その写真を撮っていると、キツネの足跡を発見した。
その足跡を気づいたら追っていた。
月明かりに照らされて歩いてると、不意に月面上を歩いている気分になった。真空だから音はしないのだろう。この雪原も音を雪が吸収してほとんど無音に近い状態だ。
雪のない地域の人にはとてもわからない感覚だろう。音がないという感覚は。
足音と自分の息を切らす音しかない。
止まるとなんの音もしないのだ。とても不思議な感覚に陥る。
寒さのために雪すら凍っていて、キラキラ輝いていた。手ですくって眺める。寒さという痛みが手に走る。
月面にいるとこんな気分になるのだろうか。
ぽっかりとなにも浮かばない心で、月を眺めた。
音のない世界で月はぽっかりと浮かんでいる。
凍てつく寒さが一体の景色を制し、音のない世界が空間を支配していた。
オリオンがいた。何もない砂の惑星の横にオリオンは勇ましくたたずんでいた。