23時くらいに、満月が見たくて外に出た。静寂が外を支配していて雪の上を歩きたくなった。
30分だけ。
周辺を歩く。月の光で雪面は輝き、木の影は色濃く雪原に映し出される。
歩く。影を求めて。歩く。
雪は音を吸収する。音がない感覚というのは、不思議なものだ。耳の奥でキーンという音が鳴る。
視界も開けた場所だけど、音がないというだけでかなり違った感覚を覚えるだろう。自分の存在そのものが周りと一体化した感覚になり、考える事ができなくなる。
お気に入りのkelly lee owensをスマホから鳴らした。冷やりとしたエレクトロニカなサウンドがとても心地よかった。
https://open.spotify.com/album/7z6fUAxSNYLKEkxrcPcfZx?si=FY1XUnwqRg-3UmLPTyHL1g
結局、ケリーのアルバムを一枚聞くまで歩き続け、写真を撮っていた。最後の8という曲がかかった時に、魔法は解けた。この曲で終わらせた方が良い。
たとえこれから先、良い写真が撮れる可能性はあったとしても、この曲が終わる頃に家に辿り着いた方が良い。幻想的な曲が響き渡る。
自分の影を見た。カメラをむけてその自分の影を撮ろうとしたが、それはやめた。変わりに自分の歩いた足跡の写真を撮った。ケリーの曲が、歩いてきた軌跡を称えているように聞こえてきた。
月と正反対の方向を歩き、家に入った。
https://open.spotify.com/track/3LndyfZgit3AjhUmwCWvNX?si=eHMWTlnET7WsCgfk3q8_0g