忙しく働いてる。朝5時に起きてウシを放牧地から呼んできて、8時に終わらせてから牧草作業をする。
子供がもじもじしながら遠くから見ていた。トラクターにどうしても乗りたいのだ。大きなトラクターに乗ると高い目線から景色が見えるし、色々とかっこよく見えるようだ。
天気は良かったけど、風は冷たかった。
絵画に描かれてるような雲が流れてゆく。それをスマホで撮る。画面に映るその風景に、その草地と刈った草の狭間で瞬間的に二等辺三角形を見つける。
それが良い写真というわけではない。ただ見えてしまう。そんな頭をしてるだけでたいしたことではない。
約5時間の草刈り、そのあとにテッターという機械を取り付けて草を乾かす。まだ始まったばかりで、機械に乗る事にウンザリはしていない。楽しい。風景の一部となって走る。空と大地の境界線の間を走ってる感覚になり、風に乗って自分が消えてしまうような感覚をこの日、少し味わった。
次の日、牧草を丸める。畑の形がいびつなので何度もハンドルを切り返しをするので、時間がかかる。
子供が遠くで見ていた。子供をできたてのロールの上に乗せた。とても喜び、飛び跳ねて俺の胸の中に飛び込んできた。
農家の生活を子供の笑い声に感じる。
夜、牧草をようやく運び終える。月光と遠くからのトラクターの明かりで栗の木の葉が輝いて見えた。ほんの少し、休息をして生き返る。
歩いて丘を登りトラクターと月の写真を撮る。その神秘さは写真には表れていないが、黒の風景に月とトラクター側小さな存在としてポツンと佇んでいてとても美しく感じた。
撮りながらこのような写真を撮るのは日本広しといえど俺だけだろうと思った。
しばらく見てから我を忘れて仕事に戻る。
終わったのは0時を過ぎていた。月は大地に沈み、星が朝までの短い時間に、きらめきを放っていた。
今年初の美しい天の川を見る。そのゆらめきに写真を撮らなければと思い立つ。朝5時から働き詰めでふらふらで眠る時間を無駄にしたくなかったが、撮らなければいけないと思った。
写真を撮り終えて、座り込んだ。明日が東の方角からやってくる。明るい光と共に、現実を照らし出す。目もくらむ忙しさの中でも息をつく暇はある。天の川のゆらめきと星々の光が、心と記憶に火を灯す。
その灯りは消えずにいる事はわかっている。その下で泥のように眠る。
まだ牧草は始まったばかりだ。