街に寄った帰りに少し撮影をした。車から降りると、波の音が向こうからけたたましく聞こえてきた。
歩いて行くと散乱した木片とゴミによって海岸は埋め尽くされていた。
ガラスが飛んでいく。来訪者を明らかに歓迎しない素振りで遠くに向かって飛んでいく。
すざまじい音をたてながら、白泡を吐きながら波は岩にぶつかり、砂浜に滑り込んできた。
この厳しい風景こそ北国の海岸だ、と思いながらシャッターを押した。
穏やかな光に満ちた海面を撮影しつつ、悲鳴を上げてその肉片を飛び散らせるかの如く、ぶつかり散りゆく波を撮る。
風でうまく飛べないカラス。もがいて、それでももがいてなんとか飛ぼうとする姿。巨大な風車の横で、環境のために建造させられた風車の横でなんとか飛んでる姿は、どこか人間を思わせた。
飛ばないと生きていけない。それをしないと許されない。
白波が押し寄せる。
その向こうは光で埋め尽くされた美しいグラデーションで、穏やかな時間が流れているように感じた。
海から遠のいて行くと、枯れた草のこすれあう音が響き渡った。その向こうで海の音が鳴っている。
その風車はゆっくりと回り、時間を作り出しているかのようだった。
この5分前にはあそこにいたのだ。
しかし今はそこにいた事も、幻のように感じた。
いったい何を見たのか。
写真を撮り車に乗って暖房を最大限にして、車を走らせた。