98.丘の上の木 写真

初めて星空の写真を撮ったのは、この木に焦点を合わせて撮った。ボケていてうまく撮れなかったけど、それでも天の川が綺麗に写っていて感動したのを覚えている。

以後、常に星空を常に意識しながら生きるようになり、そして様々な所に行って年間で300枚は撮るようになった。勿論、それが良い写真かどうかは別問題だけど。しかし星空を見ると、パッと外に出て15分くらい撮影して帰ってくるのが日課になった。

8月10日にこの木が倒れてからおよそ四ヶ月経つ。

いつも台風や爆弾低気圧がくると、今日は倒れてないだろうか、と不安になりながら朝、丘を見る。もう限界なのはわかっていたから。

この日もそうだった。朝歩きながら見たら、木は立っていて良かったと安堵したのを覚えている。

だがその1時間後、倉庫から外に出ると木は倒れていた。あの時は立っていたのにという思いが唸り声となって口からこぼれた。

あの時は立っていたのに、と。

昨日、月明かりを見ながら丘に行った。真っ白な白い雪原に映るあの巨大な木の影を写す事はもうできない。

月明かりに映る自分の影を見ながら、全ては幻だったのではないか、と一瞬思った。

月明かりに照らされて、雪原に映る木を撮るのはとても気に入っていた。

来年、丘の上に木を植えようと思う。子供達と一緒に、丘の上に木を植えようと思う。