マイナス10℃の気温の下、雪原を歩いた。月光に照らされた雪原は、昼間とは違う世界を形成した。
冷気が呼吸と共に体内に入ってきて、クリアな意識を誕生させる。月が照らすこの雪原は、誰一人いないこの状況は、まるで違う惑星にきたかのような感覚におちいる。
ほとんど何もない雪原を歩いていると、景色も変わらないから自分が歩いているにもかかわらず、歩いてないような錯覚になる。
Ulises conti の161.1をひたすら聴きながら、雪原を歩いた。メロディーが螺旋状に展開していく。
星の軌跡を想像しながら歩いた。
星空を見ながら生活していると、月明かりによって見えなくなった星の展開をどうしても想像してしまう。
もうそういう風に生活リズムに組み込まれてしまっているのだ。
https://open.spotify.com/track/3RwTPFqufAXpe1n5Mu5qKo?si=ZnoYBh5lR6ahxfTmhUablA
音は気持ちを落ち着かせてくれる。みずみずしい空間に音が螺旋していき、星と共に呼応する。
フィボナッチ の黄金比率1:16180339887...
音を聴きながらその数値を数えた。それがとても落ち着く。初めてその時、この空間とシンクロする気分になる。その時その空間の空気をゆっくりと吸い込み、生きてることを実感する。
その木の影は、雷が落ちたかのように見えた。
その木は枝が雷を放っているように見えた。
お気に入りの木の所まできた。
雪原に佇むその木はどこか雰囲気があった。木と木の間を通り抜けて後ろを振り返ると、なんだか大きな門をくぐった気分になった。
月を見た。こちらを見てるような感じがした。頭の中に流れてくる音と月が重なりあい、現実的ではない世界を演出した。
家の近くに来て音楽を止めると、フクロウの鳴き声が聞こえてきた。
その声はとても近く感じた。音一つしない風景の中で、フクロウの声だけが響いた。
鳴いている方向へ歩き、カメラを向けた。
沈黙があった。
だがそのあとフクロウはまた鳴き始めた。月を見つめた。自然に頭の中で1,161の曲が鳴り始めた。
螺旋状に成長する木の枝でフクロウか鳴いている姿を思い浮かべた。
螺旋の世界で万物は生まれ、絶えていく。
冬の寒さで何も育たぬこの世界でフクロウの鳴き声はなにかを啓示してるかのように聞こえた。
月は周辺を照らしてもその姿は見えなかった。しばらく座って、その鳴き声に耳をかたむけた。