写真、自然、音楽、科学、が趣味

生活の風景

音楽、写真、日常を切り取る感じで。

169.木の葉の響き

f:id:spiralout:20211108194818j:image

 

 

明日は荒れる天気になるらしい。ふと夜空を見た。その兆候は、まだない。栗の木に視線をうつして眺めてながら歩いていると、風によって木の葉がかすれて音がした。

 

 

思わず足を止めてその音を聞いた。おそらく明日の暴風雨で、木の葉は一つ残らず飛び散るだろう。

 

根から養分と水を吸い上げ、およそ100年生きてきたこの栗の木は他の木とは交わる事なく孤立して、孤独に立ち尽くしている。

だがその姿は幼少期から見慣れ、親しみを感じつつ、家の周辺では最初の美しい風景でもある。

 

カメラを取り出して写真を撮った。曇り空で星はほとんど見えない。2枚目を撮った時に風が勢いよく吹き始めた。木の葉の音が風に乗って響いた。

 

その音は低く重くそして冷たく、壮厳だった。

 

f:id:spiralout:20211108194835j:image

 

 

初めてその木の声を聞いた気がする。真っ暗でその木の全容は見えなかったが、その音は心の奥底に響いた。

 

自然にその木何何を言おうとしてるか、耳をすました。もちろん、わかるわけがない。だが心も肉体も引き締まる思いがした。

 

これが最初で、今年の最後の対話だった。明日には木の葉は飛び散ってしまう。

 

しばらく見ていた。暗闇の中で1人だったが、それが寂しいとは思わなかった。