牧草地をトラクターで走り回る。自分の家の収穫は終わったが、近くのひとの家の収穫の手伝いをした。120個はあろうか、散らばって転がっているロールを数カ所に集めた。
少し木陰で休んだ。風の勢いで木の葉がかすれて心地よい音をだし、見えぬ所で鳥達がさえずる。
人のいない所でこんな世界があるのだ、と実感する。
もう25年は使っているこのnew Hollandの40というトラクターは、小回りが効く上にパワーもあって名車とされている。
昨年は思い切ってメンテナンスに120万の費用かけて修理した。信用に足る右腕の存在には、まだあと10年は活躍できる。メインで使うトラクターではないにせよ、小回りが必要な時にはこのトラクターは欠かせない。
夕方になって散歩をした。田舎の車が通らぬ一本道。気楽な王道。子供達ははしゃいで走り、奇声をあげてオレンジ色に染まる空に向かっていくチョウチョウを追っていった。
深夜のてっぺん、真夜中の底にあたる0時。月は沈み、天の川が流れ始めた。写真を撮った。だが風が吹いてバラが揺れてどうしてもブレてしまう。3回試したが、同じ結果だった。
風さえなければ。
射手座とサソリ座が綺麗に夜空に貼りついていた。輝くサソリ座の真ん中にあるアンタレスが、こちらを見ているかのように見えた。
少し散歩した。犬が喜んでついて来た。
ヒヤリとした冷えた風がとても心地良かった。それを全身で浴びながら、道を歩く。
このくらいがちょうど良い。寒くもなく暑くもなく、心地よい風が疲れた身体をふわりと抱きしめて離れていくかのような錯覚を覚えた。
ガードレールに腰掛けて、星を眺めて風を感じた。
風さえあれば。星空を眺めながら風を感じてると、犬が風が吹く方向に向かって歩いていった。
しばらくその様を見て帰路につく。こんな風が明日も吹いていればいいなと思いつつ玄関の扉を開けた。