仕事から帰ってくる途中、その静けさに少し驚く。今日は写真を撮ろうと思った。
子供が寝て夜の9時半に外に出る。
曇り空だったが、一種だけ星が見れるようになるだろうと思った。
ほんの5分間くらいだったと思う。今月に入って星空は拝めないでいた。ようやく撮れた、と思った。
家の明かりを利用して庭の木々を写し始めた。
この写真を撮ったとき、向こうの沢の方からフクロウの鳴き声が聞こえてきた。音の響きからしておよそ直線距離で100メートルくらいの木にフクロウはいるのだろうと思った。
それまでフクロウの鳴き声はしていなかった。
おそらく俺を視認できて鳴き始めたのだろう。
雪がゆっくりと降り始め、見えない向こう側でその声だけが聞こえる。
写真を撮っている間、フクロウは鳴き続けていた。静寂が支配して、耳の向こうでキーンという音が聞こえる。無音になると耳の音が聞こえるのだ。
そこにフクロウの声がかぶさる。おそらく森にうごめく者がいると知らせているのだろう。
それがその鳥の役目なのだと思った。
雪をはらった。一枚だけフクロウの鳴く方角を写真で撮った。
その暗い闇の向こう側から声は聞こえる。いつでもそうだ。その姿は見えない。これから先もそれを確認できる事はないだろう。
だがそれでいい。この静寂をかき乱す事はしたくはない。闇の向こう側の世界と自分との関係を壊したくない。
フクロウの声がまた一つ聞こえてきた。