four tetのbabyというMVが公開された。空を飛んでいる映像をつなぎ合わせたビデオで、空を飛んでいるという事はどんな気分なのか、少し考えた。
見終えた後に、防寒具を着て見回りをしに外に出る。
うっすらと星が見えた。空を飛んでいるMVを見たせいか、写真を撮りたくなった。
オリオン座が木の枝と枝の間を通過していく。やがて雲に覆われて見えなくなっていく。
静かに眺めた。
あの見える多くの星々は、ここから30光年は離れている。光の速度で30光年だ。つまり見ている星の多くは30光年以上前の輝きだ。過去の輝きを見ているという事になる。
仮に30光年先の星に行けたとしても、もうすでに地球はない。太陽の質量が一点に集中出来ず、膨張して地球の軌道まで大きくなってしまうからだ。
もうその時には地球は存在しない。そして30光年離れた星も存在してるかわからない。
宇宙は加速して拡がっていく。人間は1次元の時間という一方通行の上を歩いて、あるいは流されていかなければならない。それが人間の運命というものだ。
過去に戻る事は出来ず、また遠い未来を見る事もできない。ただ明日に向かって歩き、流されていく。
使われていないサイロの下で写真を撮った。構図もどうでも良かった。
ただ、星が消える前に。
ヨハンヨハンソンのheptapod Bがヘッドフォンから流れる。メロディーがループしていき、リズムが、時間があとからついてくる。
そこでは過去も現在も未来も同列で、1次元の時間から解き放たれて、旋回をしながら駆け上がっていく。
想像する。
曲が終わる頃には星は雲に覆われて見えなくなっていた。しばらくその様子を眺めていた。
帰路に着く。眠りから醒めたらそこは明日だ。
しかし思考はその先を飛びながら、漂う。