写真、自然、音楽、科学、が趣味

生活の風景

音楽、写真、日常を切り取る感じで。

92. 冬の訪れ オオワシ スナップ写真

 

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望遠レンズをつけて、ファインダーを覗いた。距離が遠すぎて、はっきりと顔は見えない。

 

冬の象徴が次々と飛来してきた。夏の間は緑に覆われていた森も、今では葉を落として殺風景になってしまったが、そこに寒さと共に威厳を持ち込んできた。

 

命からがら生き延びてきて、次世代に命を繋ぐために遡上してきたサケに鋭い爪を突き立て、身体を引き裂いて命を貪る。

川の音に全てはかき消される。白い死の雪原に、命の色がにじむ。

 

 

 

 

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その姿は罪の姿だ。生きるために命を乞う。幼少の時から、その刹那を見てきた。

 

食い散らかした後は、その翼を広げて十字架の姿で、どんよりとした灰色の空に、蒼い空に飛んでいく。彼らもまた、命を繋ぐために生きている。十字架の姿で。小さい時からゆっくりと空を旋回する十字架を見て、生きる事を学んだのではなく、植えつけられてきた。

 


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ある時、オオワシの事を東京の知り合いに話した。2メートルはあるその大きさで空から旋回する姿の話や、吹雪でもそのたたずむ姿の事を。

そのオオワシが飛び立ち、何かを捕まえて空にきえたのだけど、よく見ると捕まえていたのはキツネだったと言うと、突然知り合いの女の子はキレてまくし立ててきた。

 

なぜそんな事を言うのか。キタキツネが可哀想だとは思わないのか。どうしてそんなに嬉々と喋れるのか意味がわからない。殺されているのにどうして。信じられない。そうやって喜んでしゃべれる人間がいるから、虐待は減らないんだ。

 

 

それは些細な事だ。近くても届かない事はある。だがあまりに距離が遠すぎて、その時に自分の中で何かが崩れ落ちて諦めた。彼女が悪いわけではない。環境が違うだけだ。だがどこまでも遠くて、俺には無理だと途方に暮れた。

 

それ以降、犬、猫やペットの話は聞いているフリをするようになった。


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心の中でつぶやく。お前は去年も来たヤツか?それとも初めて来たヤツか?どのみちこれから俺の姿は見かけることになる。憶えておいてくれ。そしてできればもっと近くでその姿を見せて欲しい。刻印しておきたいのだ。

 

どうせお前達は音もなくある朝に忽然と消えていくのだから。

 

 

 


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獲物を見つけたオオワシは、飛び立ち消えていった。

 

 

カメラの電源を切り、ヘッドホンのスイッチを入れる。Bluetoothスマホに繋ぎ、oneohtrix point neverのambien1をかけた。

 

 

途切れ途切れのメロディーが、鳴り響いた。うまく飛べない音が、なんとか繋がり旋回する。

それが美しくて。それが。

 

空を見上げると、十字架が俺の頭上を旋回していた。カメラをかまえて撮影しようと思ったが、陽の光でまぶしくてどこにいるかわからなくなると思った。それよりも音と風景の世界に溶けこんでいたかった。

 

ゆっくりと歩き始めた。

 

https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_k-8n3M8myhCp_wlvshRjCByJ_cyplLeuk