部品をつけてトラクターのエンジンがかかった時は、座席に倒れこんだ。ようやく修理が終わった。クタクタに疲れた身体を起き上がらすことに、しばらくの時間が必要だった。風は勢いよく吹きさらして、笹が頭を振っていた。
やけに木の枝が不気味に見えて、死をイメージさせるような存在に見えた。
カメラを構えて撮影する。風のおかげでどうしても木もブレてしまうが、かまわず撮影した。
曇っていて月は見えなかった。見えるまで待とうと思ったけど、寒くて仕方なかった。
トラクターを運転しながら、月が見えないか覗いた。その時、月が撮影したいのではなく、月の光を感じたいのだ、という事に気づいた。
朝から曇っていて光を浴びてなく、そして汚れに汚れてようやく仕事が終わったが、どことなく救いがないような気がしていたからだ。
たとえ砂でできていて死んだ惑星といえど、その光は柔らかくてそして静かだ。ただ黙って見ていてくれる。
孤立している心に、なにかが届く。だが、その姿は見えなかった。
玄関のドアを開けた。暖かい空気と雰囲気を感じ、ようやく長い1日が終わろうとしている事を実感した。
冷えきった心にぬくもりが流れこむ。ありがたい。
先程、遅めの夕食をとっている最中に、月が見えた。急いで外に出てカメラを構えて3枚ほど撮った。
すぐに雲に覆いかぶされ見えなくなったが、それでも窮屈そうではあったが、光はにじんで見えた。
あの姿で、その姿勢でいいのだろうと思いながら、家に戻った。