少し前に、釣りをしに行ってきた。小さなクロソイが遊んでくれて、食べられそうなサイズの25センチオーバーを2匹釣ってやめた。
真っ黒な海を見るのはとても落ち着く。
色のない世界は、やはりいい。
黄色いライトの光が、ゆらゆらと揺れながら海の上を漂い、次の日の朝までその場所から逃れられずにそこにいる。
その後、30分くらい写真を撮った。たいして良い写真は撮れてない。誰でも撮れるような手垢のついた写真ばかりだ。少なくとも何度となくこういう写真は撮ってきた。
しかし久々に写真を撮るのに集中できて嬉しかった。
影をどう撮ろうかと闇の中で暗中模索。なかなかうまく撮れない。すると向こうから猫が歩いてきた。こちらに来るのかなと思うと、足を止めてこちらの様子をうかがっていた。アイツを撮るには遠すぎる。すると猫は二度三度鳴いて向こうの方に向かって歩いて行った。
きっと飢えていたのだろう。
明日の朝まで漁師が魚を獲ってきてくれるまで、あの猫はエサにありつける事はない。腹を空かしても、この漁港から離れる事はできない。
猫の事を忘れて、カメラを影にむける。するとどう撮ろうか悩んでいたのが嘘のように、ファインダーに影がおさまった。シャッターを押した。
後ろを振り返り、猫を探した。まだ歩いているのが確認できた。カメラを持って車に向かった。夜の深い時間、色のない世界から離れる時がきた。
星を少しだけ眺めてそして猫の行方を確認したが、勿論アイツは振り返る事も星を眺める事もなく、おそらく途方に暮れながら色のない世界を彷徨っていた。