昨年の年末に妻の里帰りに新函館北斗駅に送ったあと、写真を撮りに行った。どこかないか一瞬思案した結果、ここから20分で行ける太平洋セメントあたりの写真を撮ろうと思いたった。
近くの漁港に行くと猫が群がった。漁師に餌付けされているみたいで人間を全く怖く思っていなかった。ドアを開けてカメラを出してる最中に車の中にまで入ってくる始末。
不思議と9割方が黒猫だという事にちょっと驚きつつ、漁港の防波堤のハシゴを登って撮影を開始した。
漁港の先端に行く途中、猫がついてきた。餌がよほど欲しかったのだろう。少し撫でるとお腹に子供がいる事を確認した。
砂浜に移動した。
曇り空になって雪がフワリフワリと、それでも大量に降ってきた。
海と空と雪。それしかなく、視界に入る全てがモノクロになった。雪でおおわれた砂浜は、ことさらモノクロの世界を強調した。
最後の一枚はボヤけた写真だ。マニュアルで撮影しようとしたが、怪我をしている親指は動かずに焦点がうまく合わせられなかった。だが、そのボヤけた感じがとても良く、なんだか年末に撮るにはふさわしい写真のような気がした。
つかめないのをわかっていてつかもうとする。写真とはそういうものと割り切って楽しんでいる。
車に乗り込み、フィオナアップルが歌うlove moreをかけた。
マイナス8℃の風景。美しくゆっくり降る雪。降り続ける雪の向こうで、灰色の世界に浮かぶ太陽。
フィオナアップルの歌声が、その風景を意味あるものに変え、帰るべき場所へうながした。
車を走らせた。
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