納屋の方からドカドカという音が聞こえた。何事かと思って行ってみると、屋根から雪が崩れてくる音だった。
氷柱がかたむいていた。その氷柱の透明感に目を奪われる。本当に綺麗だと思った。仕事がおわったら写真を撮ろうと思い、戻った。
倉庫の電気を全て消して、撮影した。少しノイズを入れてみた。
撮った写真を見ながら、綺麗だなと思った。途端にチカラが抜けて動けなくなった。
もう少しここにいたい。氷柱を触り、先端のとがった部分を手のひらに刺した。
透明で美しい水の結晶体が、手の平にくいこみ、冷たさと痛みが伝わってくる。そしてそのまま氷柱を折ってしばらく触り、頬につけた。
心地よい冷たさがしみてきた。
ずっとこの透明な水の結晶体を頬に押しつけていたいが、それはできない。
ずっとここにいて氷柱を眺めていたいがそうはいかない。
一瞬だが、その事に気づけるだけまだマシだ。
立ち上がり、カメラ持ちながら歩く。雪は降り止まない。明日もまた雪だ。
折った氷柱をなるべく遠くに投げて、家に戻る。
風の音と雪を踏みしめる音は暗闇の中でも確かに聞こえていた。