月明かりが照らしている雪原に子供と一緒に出た。
マイナス5℃の寒さがピンと顔に突き刺さる。
月の下でソリ滑り。いつかこういう遊びができたらな、と思っていた事ができるようになった事が嬉しい。
昔、月明かりの下で自分も同じように親父に連れられてやっていた。誰もが体験できる事ではない。本当に無音で静寂しかない所で、月明かりに照らされて遊ぶというのは特別な事だ。
写真を撮りながら、かつて親父にも同じ様な気持ちだったのだろうかと思った。
3枚くらい撮った時に、なんだか無理矢理子供にポーズをとらせている様で、自分が嫌になった。しかし子供がウルトラマンのポーズやスパイダーマンのポーズを撮ってくれと言ってきたので、笑ってしまった。
静かな夜だった。子供が海の中にいるようだねと言ってきた。
なるほどそれはこういう月夜にはピッタリの表現だな、と思った。オリオン座、月夜、北極星と北斗七星。
昼より雪は凍って、数倍のスピードで薄暗い海の中を滑るのはとても驚いていた。
遊んだあとに、カメラを設定して子供にシャッターボタンを押させた。これが初めての写真だ。撮った写真を見せたら、すごいねと喜んだ。
誰も知らぬ地の海の中で、夢を見る。
静寂の美しさを子供はカメラと心におさめた。