公園を散策する。子供達は足早に歩いた。沼というより大きな池と言った方がいいだろう。少し登って見たところの風景を写真に撮りながら、まだ冬の面影を大きな池に感じた。
木に葉が芽生えてないために、風によって葉がこすれたりする音が聞こえなく、ただ風によって木が揺れたり風を切る音だけが聞こえた。鳥の声も盛んに聞こえたが、やはりどこかまだ物哀しい雰囲気が漂っていた。
木に絡みつく蛇のようなヤマブドウのツルを撮ったりした。
子供達は早く早くと歩く。この頃にはさすがに疲れてるのが見てとれた。しかし抱っこと言わないのが微笑ましい。
強烈な見た目を持つ木の写真を撮る。木の葉がついてない分、不気味さが増して見える。これは冬の時にまた来て撮りたいと思った。
白銀の世界でどのような写真が撮れるだろうか。
そしてふと下を見ると、植物が芽生えていた。
螺旋状に、法則通りに成長している。何かの意志は感じないが、しかしその法則がとても美しく見えた。
白樺の木に淡い緑が芽生える瞬間は、もしかしたら一番美しく見えるのかもしれない、と写真を撮ろうとした時だった。
おばあさんが電動バイクに乗ってやってきた。これには驚いたし少し笑ってしまった。
まさか公園とはいえ、山道のようなところを電動バイクでくるとは想像もしてなかった。一応、ハイキングコースなのだから。
おばあさんとあいさつをして二言三言会話を交わした。少し照れながら山菜を取りに来たという。
毎年来てるから。
おそらくこの電動バイクのバッテリー容量を考えればこの公園の近くの家だろう。
毎年何十年とここに山菜取りに来ていて、春を感じると、たとえ足腰が弱くともここに来るのだろう。
森と共に生きてきたから、ここに戻る感覚は消えず、思い出と共に山菜をとる。
風と木のささやきのような音と鳥達の声に包まれた森の中を、おばあさんは進んだ。
どうしても写真を撮らずにはいられなかった。