夏休みも終わりに近い。子供と花火をした。次男坊は残念ながら花火をやる前に寝てしまった。
花火の準備をしていると親父が来た。病気を患い、なかなか思うように身体は動かない。自発的に行動する事が困難になりつつある。
それでも一夜を楽しみたいと思ったのか、辿々しい足どりで芝生にきた。
親父とは仲良くもなく悪くもなく、いわば昭和の親子関係と言っていい。喋る事は少なく、ああ、とうん、くらいだ。野球の大谷くらいしか話す事はなくて、お互い目を見て笑うのもなんだか恥ずかしい。
今みたいに機械化された体勢で仕事は進まなく、ほとんどが手仕事だった時代だ。故に親父はほとんど家にいないのが当たり前で、接点がそんなになかった。
それが昭和の家庭の風景だったと思う。話す事があるとするなら、ゲンコツが落ちてくる時くらいだった。
花火に照らされる親父を見て、写真を撮った。子供と花火の写真を撮るつもりでいたのに、いつの間にか親父を被写体にして撮っていた。
自分で花火もつける事ができなく、俺が花火に火をつけて渡した。親父はそれを見つめて花火が終わるのを待っていた。
親父を家に送り、空を見上げると月が昇ろうとしていた。
輝く月を撮ろうと思ったが、やめた。
輝くものを、もうその日は撮りたくなかった。
それでいいと思った。