黒松内の帰りに海に寄る。寒さが乗った風が頬にあたる。冬が間近である事を実感した。白波が美しくモノクロでの撮影のみにした。
生命と、ゴミと、枯れ木が一緒に打ち寄せるこの浜辺に、木にもつれた旗を見つけた。
自然にからみつく人間社会。もはやほぐれる事はなく、いつまでこの関係は続くのだろうか、と少し考えた。
風によって旗はなびいた。影もまた同じようになびく。その光景が少し哀しく感じた。
およそ15分の撮影時間。車に戻ろうとすると、一隻の小さな舟に目を留めた。
せめてもう一度、海に浮かびたいと訴えているように思えた。それは舟自身なのか、それともこの舟の持ち主の想いなのかわからないが、どちらにしろ海に戻る事はもうないのだろう。
少しの時間、カラーで撮るべきか迷った。晴れた空のと共に撮るべきか、その方が空が美しく見えて写真に写る痛みが消え失せるのではないかと思った。
一度ため息をつき、カメラをかまえて写真を撮る。
波の音が聞こえる。だけど白波が立つ海そのものは壁の向こうでよく見えなかった。