夜の9時にようやく除雪が終わる。危険なのはわかっているが、また倉庫の屋根の雪おろし。
もう身体は悲鳴をあげて、動くのもままならない。
トラクターの明かりを盛大につけて、照明代わりに作業を進めた。屋根の上から見る景色は格別だった。草原が雪原に変わり、明かりによって木のシルエットが美しくのびていた。屋根の上から写真が撮りたかったけど、あまりに危険だからやめた。目に焼きつけ自分だけの知ってる世界にとどめた。
どこまでも白と黒の世界が続いた。漆黒の黒。そこにゆっくりと、ふわりふわり雪が空から落ちてくる。
この雪に苦しめられてるのに、嫌いにはなれない。
除雪を終えて、写真を撮った。一枚の絵を撮っている気分になった。もう四回目になるが、ある小説を読み返している。大好きな小説だ。物語の主人公はかつて妻と出会い、ルーブル美術館のモナリザの前で愛を誓い合う。
しかし地球の運命を背負う事になり別れてしまうのだけど、最後の時が訪れる時に再びモナリザの絵に偶然にも対峙し、昔を懐かしむ。
このシーンがとても好きだ。木の写真を撮りながら、そのワンシーンを思い出した。
再び雪がふわりふわりと空から降ってきた。涙が落ちてくるように。
その場に座りこみフランクオーシャンのセルフコントロールという曲を聴いた。小説の世界と目で見ている世界、そして歌が重なり合い、疲れた心にひとときの安らぎをくれた。
ラストのコーラスを口ずさみ白と黒の世界を歩いた。
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